TIPS
・1日にどれくらいの電力が必要なのか明確にする
・その約3倍のサブバッテリーを選ぶ
・薄型のソーラーパネルを両面テープで貼る
1日にどれくらいの電力が必要なのか明確にする
だいたいの家具を作り終えたところで、ぼくたちのDIYは2ヶ月あまり停滞した。
それほど苦悩させられたのが「電気まわり」だった。なにせ、ネットが全く役に立たないのだ。これまでは、パソコン上のバグにせよ、裏チベットへの侵入方法にせよ、根気よくネットの海を潜っていけば、必ずや「まとめ」が見つかったものだ。これまでのDIYもそう。たとえば、蝶番の付け方なんかは、懇切丁寧に説明してくれているサイトが必ずあった。
しかし、バスをオフィスにするために必要な電気システムをつくるには何が必要で、どのように設置すればいいのか。それらの「まとめ」など、どこにもありやしなかった。ネットが使えないとなると、ぼくたちは完全に行き詰まってしまった。
なにはともあれ、ソーラーパネルが必要なはず。ソーラーパネルを取り扱っている会社に問い合わせまくった。電話代の通知を見るのが怖いぐらいに電話した。しかし、たいていは「バスに取り付けたいんですけど」と言ったところで、「うちでは取り扱いがありません」と断られてしまう。
そもそもソーラーパネルでいいのか? キャンピングカーなら「走行充電」という手もある? ガソリンで発電する「発電機」はどうだ? いずれにしても高額な買い物だ。選択肢を増やすたびに迷路に迷い込んでいくようだった。
ひとつの活路が見えたのは、ソーラーの専門家に会いに行った──平成エンタープライズの田倉社長にご紹介いただいた──ときのこと。「まず、自分たちがどれくらいの電気を必要としているのか。それをシミュレーションしてみたら?」というアドバイスをいただいたのだ。確かに、まずはそこからだった。
・常用で使いたい電化製品
ノートPC 50W
各種機器充電 20W
車載用FFヒーター 30W
扇風機 50W
スピーカー 20W
照明 50W
=合計:250W
・まれに使いたい電化製品
モバイルプロジェクター 300W
水道ポンプ 30W
炊飯器 400W
=合計:730W
・できれば使いたい電化製品
冷蔵庫 50W
=合計:50W×24h=1200W
※冷蔵庫は24時間電気を使い続けなければならないことがネック。代案はクーラーBOXか。
・使うことをあきらめる電化製品
IHクッキング 1200W
電子レンジ 1000W
ドライヤー 1200W
エアコン 1000W
換気扇 5W
※窓を全開にすればよし
以上のことから、仮に1日に「常用」を6時間使用して、「まれ」を1時間使用した場合は?
250W×6h+730×1h=合計:2230W
各家電がどれくらいの電気を食うかという目安はネットを調べれば出てくるはずだ。ぼくたちの場合、1日につき「2230W」が必要だった。ちなみに、W=ワットとは、1時間使用することで消費される電気エネルギーを表している。
その約3倍のサブバッテリーを選ぶ
さて、ぼくたちは1日につき「2230W」を発電する必要があることがわかった。では、そのために何を用意すればいいのか。ぼくたちはまた途方にくれた。しかし、とあるキャンピングカーの制作会社に問い合わせをして「ソーラーについてはわかりません」と断られたとき。「じゃあ、ソーラーはどうしてるんですか?」と、ヤケクソのように投げかけた質問がヒットした。
「うちはソーラーについては“オフグリッドソーラー”さんに任せています。」
それなら、直接「オフグリッドソーラー」という会社に相談してみよう。そして、電話口に出た「南澤さん」と出会ったことを境目にして、すべては解決した。
結論から書こう。
まずはソーラーパネルより先に「サブバッテリー」を選ぶべきだ。サブバッテリーとは蓄電池のこと。雨の日は発電できないことなどを考えると、1日の消費電力量の3倍が理想的(ぼくたちの場合は2230W×3=6690W)だと言われているが、それより少なくても構わない。
サブバッテリーの選択肢は大きく2つ。「鉛バッテリー」か「リチウムバッテリー」か、だ。リチウムは性能で鉛を大きく上回っている。しかし、価格もべらぼうに高い。ここはシンプルに予算で選ぶしかない。
さて、その予算だがぼくたちの改造費のほとんどが、このサブバッテリーに注ぎ込まれたといっても過言ではない。リチウムを選び、さらにオフィスとしての大容量蓄電を目指したぼくたちは約100万円相当を必要とした。なにしろ、リチウムバッテリーは1機につき25万円。鉛バッテリーなら1機につき2万5000円で済む。
なぜ、それほどまでに高額なリチウムバッテリーを選んだのか。様々な性能的な理由があるが、格好をつけてみれば「夢に賭けた」というところだと思う。
このリチウムバッテリーは、日産リーフなどの電気自動車に搭載されているバッテリーと原理的には同じもの。つまり、電気自動車はリチウムバッテリーで動いているのだ。そう、ぼくたちが夢見たのはソーラーパネルとあわせて、ガソリンスタンドでガソリンのように電気を充電すること。ぼくたちが選んだリチウムバッテリーは、その可能性を残している。
薄型のソーラーパネルを両面テープで貼る
サブバッテリーとその容量が決まったら、次に「ソーラーパネル」を選ぶ。ソーラーパネルの容量は、1日の消費電力量の1.5倍が目安(ぼくたちの場合は3345W)だが、それより少なくても構わない。
ソーラーパネル自体の選択肢はいろいろあるが、ぼくたちは「薄型ソーラーパネルの一択である」と断言する。
そう、ソーラーパネルには薄型がある。それも厚さ数ミリのプラ板レベルに檄薄だ。もともとヨットで太平洋を横断するような人たちが使っていたものらしいが現在では一般人でも手が届くようになってきた。
発電性能は一般的な分厚いソーラーパネルよりとほぼ同じ。しかし、薄型は値段が2倍ほど高くなる。具体的に言えば薄型は1枚で9万円だ。しかし、分厚いソーラーパネルを取り付けるには、バスの屋根にキャリア=固定具を設置しなければならない。この固定具が、めちゃくちゃ高いのだ。ぼくたちのバスの場合、固定具だけで50万円と言われたぐらいである。それならば、と自作するにも鉄パイプを切ったり、屋根に穴を開けたりと素人にはハードルが高い。
しかし、薄型ソーラーパネルなら取り付けも簡単。なんと、「両面テープ」で貼ることができるのだ。両面テープも、「3Mの超強力な両面テープください」と聞けば、たいていのホームセンターに置いてある。これが、とにかく画期的。ぼくひとりで4時間ほどで貼り終えてしまった。
ソーラーパネルを貼り終えたら、蓄電池であるリチウムバッテリーまでケーブルをつなぐ。天井に穴を開けなければならないと考えていたが、バスをよく見るとドアの隙間に穴が空いていた。
これはちょうどいいということで、ここからケーブルを引き込むことにしたのであった。
「サブバッテリー」と「ソーラーパネル」。そのほかには「充電コントローラー」と「インバーター」が必要だ。それらを配線すれば、電気まわりは完成となる。配線はどうしたのか? 白状しよう。ぼくたちは白旗をあげた。南澤さんが配線するのを見守ることしかできなかった。
ずっと見ていて、これはプロにしかできないと思った。電気まわりは下手すると大事故につながる可能性もある。とくにリチウムバッテリーを選んだ場合は、配線が複雑になるので気をつけたほうがいい。
まわりくどい話になってしまったことを申し訳ないと思う。ぼくたちが言いたいのは、困ったら「オフグリッドソーラー」の南澤さんに相談してみようということだ。
南澤さんはとても信頼できる方だ。ぼくたちの質問や要望にとことんまで付き合ってくださった。次回は、コラムとして、南澤さんにインタビューをさせてもらった内容をまとめたい。
今回の内容と重複するところも多いが、一度読んだだけでは理解しづらい「電気まわり」のお話だからこそ、確認のためにも読んでみてほしいと思う。